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DEPS NEWS 2012年12月号
2013年7月31日

労働契約法の改正について

 

1.はじめに

 労働契約法は,労働契約の基本的な理念及び労働契約に共通する原則や,判例法理に沿った労働契約の内容の決定及び変更に関する民事的ルール等,労働契約に関する基本的なルールを定めた法律です。
 今般,労働契約法に,有期労働契約(期間の定めのある労働契約をいう。以下同じ)に関する3つの規定が新設されました。そこで,改正の概要と実務上の問題点について説明します。

 

2.改正の概要

(1)有期労働契約の無期労働契約への転換(改正後労働契
  約法(以下「法」)18条)
   同一の使用者との間で有期労働契約が5年を超えて反
  復更新された場合は,使用者がその申込みを承諾したも
  のとみなされ,無期労働契約が成立することについて定
  めた規定です。これは,有期契約の濫用的利用を抑制
  し,有期契約労働者の雇用の契約を図るものとして設け
  られたものです。
   「同一の使用者」かどうかは,契約締結の法律上の主
  体(法人であれば法人単位)で判断されます。ただし,
  使用者が,就業実態が変わらないにもかかわらず,無期
  労働契約への転換を免れる目的をもって,派遣形態や請
  負形態を偽装して,労働契約の当事者を形式的に他の使
  用者に切り替えた場合は,法を潜脱するものとして,通
  算契約期間の計算上「同一の使用者」との労働契約が継
  続しているものと解されます。
   また,契約期間の通算の例外(クーリング)が定めら
  れています。クーリング期間は,離職した有期契約労働
  者が再度同じ企業で働くことが事実上困難になり,労働
  者の職業選択の幅が過度に狭められてしまうことを防ぐ
  ために設けられたものです。

(2)雇止め法理の法定化(法19条)
   有期労働契約の雇止めについて,一定の場合に解雇権
  濫用法理を類推適用して雇止めを無効とする判例法理
  (いわゆる雇止め法理)を制定法化した規定です。これ
  は,有期労働契約の更新等に関するルールを明らかにす
  ることで,雇止めに係る紛争を防止するとの観点から設
  けられました。
   具体的には,①有期労働契約が反復して更新されたこ
  とにより,雇止めをすることが解雇と社会通念上同視で
  きると認められる場合,又は②労働者が有期労働契約の
  契約期間の満了時にその有期労働契約が更新されるもの
  と期待することについて合理的な理由が認められる場合
  に,使用者が雇止めをすることが,客観的に合理的な理
  由を欠き,社会通念上相当であると認められないとき
  は,雇止めは認められず,従前の有期労働契約と同一の
  労働条件(契約期間を含む)で有期労働契約が成立しま
  す。

(3)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
  (法20条)
   有期契約労働者の労働条件と無期労働契約者の労働条
  件が相違する場合に,その相違が,期間の定めがあるこ
  とにより,不合理と認められるものであってはならない
  ことを定めた規定です。
   対象となる労働条件は,賃金や労働時間等の狭義の労
  働条件だけでなく,労働契約の内容となっている災害補
  償,服務規律,教育訓練,付随義務,福利厚生など,労
  働者に対する一切の待遇が含まれます。
   労働条件の相違が不合理と認められるかどうかは,
    ①職務の内容(業務の内容及び当該業務に伴う責任
     の程度)
    ②当該職務の内容及び配置の変更の範囲
    ③その他の事情
   を考慮して,個々の労働条件ごとに判断されます。
   とりわけ,通勤手当,食道の利用,安全管理などにつ
  いて労働条件を相違させることは,上記①~③を考慮し
  て,特段の理由がない限り,合理的とは認められないと
  解されます。

(4)施行期日
   (2)の雇止め法理の法定化の規定は,平成24年8
  月10日から施行されています。(1)の無期労働契約
  への転換,(3)の不合理な労働条件の禁止について
  は,平成25年4月1日から施行されます。

 

3.実務上の影響

(1)有期労働契約の無期労働契約への転換(法18条)
   多くの企業では,無期契約の正社員を基幹労働者と位
  置づけています。しかし,解雇規制等が厳しく,人件費
  負担も重く,すべての従業員を正社員として雇用するこ
  とができないことから,業務量の変動や人件費コストの
  抑制等に対応するための労働力として有期契約者を活用
  してきたのが現状です。今回の無期労働契約への転換ル
  ールは,こうした有期契約の活用を5年以内とするもの
  です。そこで,企業としては,これまでの有期契約者の
  制度・運用を見直し,有期と無期契約者の処遇を明確に
  して,積極的な活用を図ることが必要となるでしょう。
  例えば,あらかじめ通算契約期間の上限を5年以内で定
  めて有期契約者を雇用し,上限で契約を終了させ,6か
  月のクーリング基幹を設ける取扱いにより労働力の需給
  調整等に対応し,一方で正社員あるいは新たな無期契約
  者の処遇ルートを定め,有期契約者を対象に登用の機会
  を付与して,必要な人材を確保するとういうものです。

(2)雇止め法理の法定化(法19条)
   判例法理を制定化したことにより,実務の取扱いが明
  確になりますが,具体的な解釈適用は,これまでの判例
  及び累積した裁判例に照らして行われることになりま
  す。

(3)期間の定めがあることによる不合理な労働条件の禁止
  (法20条)
   法20条違反の法的効果としては,同条により不合理
  とされた労働条件は無効となり,故意・過失による権利
  侵害,すなわち不法行為として損害賠償請求ができると
  考えられます。
   さらに,不合理とされた労働条件の定めが無効となっ
  てしまった後,その無効となった労働条件の部分はどう
  なるのかということが問題となります。この点について
  は,補充すべき労働条件が内場合には,無効となった部
  分について補充的な解釈をすることによって解決が図ら
  れることになると思われます。例えば,就業規則で正社
  員については通勤手当を支給するとすれば,正社員に限
  定した部分が無効となり,従業員には通勤手当を支給す
  るというように契約が修正されて解釈・適用されること
  になるでしょう。

 

4.おわりに

 今回の法改正は、企業経営にとって厳しい面があります。企業側には,有期労働契約の契約社員,パート社員,アルバイト社員について,認められた5年間とういう期間の間で,長期的に雇用してもよい人材がどうかの見極めが重要になってきます。
 今後,労使間において新しい有期労働契約労働者の処遇のあり方,企業における雇用システムのあり方について,再検討をしていく必要があるものと思われます。

 

弁護士 金子 昌稔

 

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